数年前に出会ったイタリア刺繍「レッティチェッロ」。
最初はハーダンガーに似ているなぁと思って気になり始め、近所でこのレッティチェッロのお教室を探したのですが、なかなか見つからない…。
でも、どうしても刺してみたい♪
なので、イタリアからレッティチェッロの本を取り寄せて刺してみることにしました。
で、本を見ながら初めて刺したレッティチェッロがこちら。
しかし、このレッティチェッロ。いやぁ、なかなか手強い…。
こんなにも本気を出して本とにらめっこしたのは、今までの刺繍人生の中で初めてです。
もしかしたら、このレッティチェッロで使われている技法の部分部分が他のヨーロッパ各国へと伝わり、その国でその技法が少し簡略化されたのではないか?と思われるような難しさ。趣味の域を超えて職人技が必要とされる刺繍。正に刺繍の王様。別格です。
レッティチェッロはルネサンス期のフィレンチェで隆盛を極めた刺繍らしいのですが、いやぁ、この技法を生み出したイタリア人って凄い! 正に神業です。
ハーダンガーは比較的、全世界的に楽しんでいる人が多い刺繍ですが、このレッティチェッロがあまり広まっていない理由がわかりました。とにかく技が細かい。
とりあえず刺そうと思えば刺せるとは思いますが、アップに耐え得るような美しい作品を刺せるようになるまでには他の刺繍以上に時間がかかりそうな印象を受けました。
というわけで、レッティチェッロはまだまだ独学修行が続きます…。
ハーダンガー刺繍。
レッスンのお問い合わせを頂く時、「ハーダンガー刺繍は経験ないのですが、刺繍初心者でもできるでしょうか?」というご質問が一番多かったりします。
刺したことのない方には、難しそうに見える刺繍のようです。
でもでも!
そんなことは決してないんですよ〜♪
クロスステッチのように図案と布を交互に頻繁に見る必要がないので、目も疲れないし、肩も凝りません。そこそこ慣れてくると、布目を細かく数えなくても、感覚で刺せるようになります。
基本はストレートステッチ。糸も1本取りなので、とても刺しやすいと思います。
そんなハーダンガー刺繍の刺し方手順ですが、まず布の真ん中十字に案内線を入れ、クロスターブロック(布の織り糸を4本すくいながらストレートステッチを5回刺す)を施していきます。
このクロスターブロックで描く形が、基本のデザインになります。
そして、ここからがいよいよハーダンガー刺繍のお楽しみ! クロスターブロックで刺した部分の織り糸をカットして、格子状に糸を抜いていきます。
格子状になった織り糸をかがっていきます。このかがり方によって、出来上がりデザインが変わっていくのも楽しみのうち一つです。
かがりの組み合わせは無限大なので、同じような形のドイリーやテーブルクロスでもデザインは自由自在! ここがまたハーダンガー刺繍の面白い部分の一つだと思います。
そうして、すべてかがって、周りをカットすると…。最初はただの一枚の布だったとは思えないくらいの作品が完成します。
ちなみに、このドイリーはオリジナルデザイン。クロスステッチを専門にする友人へのプレゼントとして刺した作品です。
ドイリーなので、どこかに敷いて使ってくれると良いなぁと思って送ったら…。わざわざ額を注文して、それに入れて飾ってくれているのことで、実に嬉しい限りです。
去年秋頃に このブログと並行してネットショップを始めてから、以下のようなメールを頂くことが増えてきました。
それは…。
「オランダには、ミースさんの新品の本や図案はありますか? 中古ではなくて、新品のものが欲しいのですが…。」
新品のものをお買い求めになりたいお気持ちはよく分かります。でも、残念ながらそれは無理なのです…。
なぜならば、今現在ミース・ブロッホの正規本や諸々の正規図案チャート紙は世界中どこを探しても再版されておらず、市場に出回っているのは当時販売された中古の品々しかないからです。
ちなみに、それらはどれもこれも1970年代前後の品々なので、全てのミース本やチャート紙にはそれなりの経年劣化があります。
ただ、この点に関しては迂闊なことは申せませんので、実際にミース・ブロッホの図案や本を発行していたオランダの出版社に連絡を取って確認してみました。
そして…。
出版社の方からの返答の要約は以下のとおりです。
Mies Blochの図案や本は、世界中のどこでも再版されていません。
彼女の図案を入手するには、当時販売されたものを中古市場で探すしか方法はありません。
ちなみに、「ミース・ブロッホの図案を掲載していた雑誌」は、今現在も発行され続けています。先日も書店に出かけたら、この雑誌がきちんと置いてありました。
戦前から続く オランダの老舗雑誌で、女性の生活に根ざしたテーマで色んな特集を組んでいます。
例えて言えば、日本の『婦人公論』のような感じでしょうか。オランダ人でこの雑誌を知らない人は、まず いないと思います。
さて、その1977年発行のミース本ですが、厚みがけっこうあります。
これを開くと、プラスチックカバーに挟まれた「写真本」と「図案8枚」が入っています。
写真本のほうは、完成品の写真が載っている冊子です。かなり光沢のあるカラー紙で1970年代のものにしてはしっかりとした作りになっています。
一方、図案一枚一枚はかなりの大判で、表と裏両方に印刷されています。
私は定期的にアンティークショップ等からこちらの本を入手しているのですが、どれもこれも個人が楽しんだ後の本なので、モノによっては以下のようなボロボロすぎる図案に当たってしまうことも…。
このような破れ等があまりにもひどくて図案の読み取りに支障をきたすような品物ははじいて、我が家でお蔵入りとなります。
ショップでお届けするミース・ブロッホ本は、なるべく状態の良いものを厳選していますが、それでも経年劣化は多少なりともありますことをご了承くださいませ。
ここ最近ずっとクロスステッチの話題ばかりしているような気がするので、たまには本業であるハーダンガー刺繍の話を…。
手芸をしない人でも知っていることが多いクロスステッチとは異なり、ハーダンガーはまだまだ認知度が低い刺繍です。
でも、私は刺繍の中ではこのハーダンガーが一番好き! なぜこんなに好きなのだろう?と思うに、たぶん…。
ハーダンガー刺繍は、自分で好きにデザインしやすい刺繍だから。
誰ともデザインが被らないただ一つの作品。それを次々と生み出していくことができるのがハーダンガー刺繍の魅力のうちの一つ。
とは言っても、もちろんオリジナルデザインの合間に時折、本に載っているものを刺したりもしています。
こちらの作品は、本に載っていたデザインを少しアレンジして刺したものです。布の周辺すべてに小さめの濃い紺色のビーズをあしらい、手作りタッセル部分には違う種類のちょっと大きめの紫色がかったビーズをつけています。
けっこう昔の作品なので、今見ると、「かがり」の部分などで詰めが甘い刺し方をしているなぁ…と思ったりもしてしまう。
でも、やはり時間をかけて刺したクロスなので、とても愛着があります。
こちらで使用した布は、薄い深緑色がかった36ctリネン。少しアンティーク調に感じられるように…と、布と糸の色をこんな感じに組み合わせてみました。
ハーダンガー刺繍の良いところは、例えば本に載っているデザインを刺すとしても、使用する布や糸の色を自分好みにアレンジできてしまうこと。
私の教室でも、体験レッスンを終えた方がすぐに自分好みの糸と布を組み合わせて、半オリジナルの作品を完成させてしまいます。
自分だけの作品。
「他の人と同じではない」のは、なかなか素敵なものです。
このように、ハーダンガーは「自由度」が高い刺繍です。一応、基本の刺し方はありますが、例えば裏での糸始末や糸継ぎの方法も、教える人によって様々。
どんな刺し方であれ、布のどちらが表か裏か分からない感じで刺すことができれば、それでOK!
私の教室でも裏をきれいに刺すちょっとしたコツを要所要所で生徒さん方に伝授しています。
さて、こちらのハーダンガークロス。布の四隅に房飾りをつけたので、キッチンなどでちょっとした掛け物としても使えます。
私がMies Bloch(ミース・ブロッホ)をフェイスブックのクロスステッチグループで 日本に初めて紹介してから約3〜4年経つと思うのですが、日本でのミースさんファンが増えてきていて嬉しい限りです。
さて、そのミースさんの図案ですが、かつてオランダでカードとして販売されていたことがあります。
これらの図案付きカードは、子どものチャリティー用のカードとして売り出されたものです。
オランダでは年末になると、色んなチャリティー目的で販売されるカードが多数あります。ミースさんのカードも、その中の一つ。(ミースさんのカードは上記の写真以外にもあります。)
これらのカードは再版禁止です。
カードを発行したチャリティー組織は、今現在もきちんとオランダで活動しています。カードの複製コピー等の行為は、当然のように違法です。
従いまして、今現在これらのカードを手に入れるには、オランダのアンティーク市場で中古品を丹念に探すしか方法はありません。
オランダ在住17年を越える私でも、これらの実物カードを目にすることは極まれなので、実際に手にされた方は大変ラッキーだと思います。
ただ、日本に住んでいる「ミースさんファンの多くの刺繍友」たちから、このカードをぜひとも入手したい!とリクエストされることが増えてきておりますので、「本物」がこちらのチャリティー団体に在庫として残っているかどうか今現在確認中です。
Mies Bloch(ミース・ブロッホ)のカード式図案。
オランダの北に位置するZaanstad(ザーンスタット)の教育委員会が発行したカードです。図案は大判。畳み込まれた状態でカードの中に挟み込んであります。
おそらく当時の教育関連の寄付金集めで販売された品物なのでしょう。ザーンスタットの特徴的な家並みの様子が描かれています。
カードを広げると、こんな感じ。横長の素敵な風景が広がります。緑の壁はザーンスタットではよく見かける家々です。
こちらのカード。
ザーンスタット教育委員会からの依頼でMies Blochがデザインしたチャートなのか、それとも元々あったチャートを教育委員会が買い取る形で発行されたのか、その辺りは今調べているところです。
いずれにせよ、このカードは「再版禁止」として売り出されたもの。そのことはカードの内側にもきちんと記されてあります。
複製コピー等も当然のことながら禁止です。
でも、とても素敵なカードなので、ザーンスタット教育委員会がまた発売してくれるといいなぁと思ったりもします。
まぁ、そのうち市に問い合わせてみましょうか、ね。