アンジェリーク

2017年5月14日

Mies Bloch(ミース・ブロッホ)のクロスステッチ図案:風車


ミース・ブロッホのクロスステッチ図案:Zaandijk(ザーンダイク)の風車。

上記のミース本を見ると分かるように、この風車。「馬車が通る道路側」と「船が行き交う運河側」の2方面から描かれた図案になっています。

こちらの風車はティーポットカバーに仕立てるデザインなので、ミースさんは遊び心を出して表と裏側で違うデザインにすることを思いついたのでしょう。





で、こちらのミースさんがデザインした風車。
今現在オランダに残っている木造風車の中では、最も古いものです。


というわけで、ミースさんが目にした当時の姿そのままの風車を 今も目にすることができます。



ただ、ミースさんの図案では「ドア枠や窓枠の色」が白ですが、今現在の風車のそれは緑色。




我が家もそうなのですが、オランダの家はこの風車に限らず、定期的にドアや窓の木枠をペンキで塗り直します。ミースさんの図案と窓枠等の色が違うのは、それが理由でしょう。

このように、ミースさんの図案とは違い、今はドア枠が「白」ではなく「明るめの緑色」のペンキで塗られています。





あと、風車の羽部分の向きが図案と違うのは…。

オランダの風車は、羽がついた台座部分が360℃回転します。その時々の風向きによって、風車守が羽の向きをベストな位置に移動させるから、というのがその理由です。





さて、ミースさんが図案化したこちらの風車。

Zaanse Schans
(ザーンセ スカンス)、Kalverpolder(カルフェルポルダー)、Oud Zaandijk(アウトュ ザーンダイク)、Koog aan de Zaan(コーフ アアン デュ ザーン)などから成るZaanstreek(ザーンストュレイク)という地域にあります。




この地域の中では一番高さのある風車で、今現在の建物で言うと5階建てくらいの高さです。

1655〜1656年にかけて建てられたこちらの風車。穀物を挽くための風車なのですが、名前を「De Bleeke Dood(デュ ブレイケ ドートュ)」と言います。意味は「蒼ざめた死」。


何とも物騒な名前の風車ですが、外壁正面には名前に因んだ死神の絵もかけられてます。





穀物を挽く目的で建てられた風車に、なぜこんな物騒な名前がついたのでしょうか?



その理由は?と言うと…。この風車De Bleeke Dood(デュ ブレイケ ドートュ)より先に建てられたHet Leven
(ヘット レイフェン)という名前の風車が鍵を握っています。

この地域でHet Levenの風車は北端にあり、新しく建てることになったDe Bleeke Doodの風車は南端。

「生きる」という意味のHet Levenの風車に対して、新たに建てる風車を「蒼ざめた死」という意味のDe Bleeke Doodと名付ける。

この相反する名前の2つの風車に挟まれた広いエリアで生活することによって、私たちは「今生きていること」に感謝や喜びを感じよう!

…という意味合いで
「De Bleeke Dood」という名前になったのだそうです。


ちなみに、死神の下に書かれてある言葉は以下のとおりです。

De Bleeke Dood

Ik ben het einde van het leven 
een ieder zij tot mij bereid
Door volop arbeid hier te geven
weet dat ik werk te alle tijd.

『蒼ざめた死』
誰もがそうであるように、私はここでいつも一生懸命働くことができ、そして今死を迎えるにあたってそのことに喜びを感じている。

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なかなか哲学的な文章が刻み込まれているなぁ…と感じます。





では、この風車の中に入ってみましょう。

玄関ドアは上下に分かれています。上のドアはずっと開いていますが、下のドアの部分は閉まっているので、掛けがねを外して中へ入ります。



中に入ると、こんな感じ。左側のカウンターでは、この風車で挽いた粉などが販売されています。




風車の動力部分は上にあるので、それを見学するためには、かなり急なハシゴのような階段を上っていかないといけません。

ちなみに、このハシゴにつかまっている子どもは人形です。



手でつかまる部分もない急なハシゴを恐る恐る上って、下を見下ろしてみると…。何だか落ちそうで怖い〜。



そして、さらに上を目指して、同じようなハシゴ階段をいくつも上っていきます。って、この角度はほとんど90度。直角です。各段の幅は狭いし、やっぱりちょっと怖い〜。






途中の階には挽いた粉袋も置いてあります。




床はところどころ下が透けて見える箇所があり、何だか落ちそう…。


でも、この床に設けられた扉を上に引き上げると、下の階には粉袋が見えました。

床板を部分的に開けられるようにしておいて、粉袋などの重たいものを上げ下げできるようにしているんですね。





さて、最上階には外に繋がるドアがあり…。





そこから外に出ると…。さすが5階建ての高さがあるだけのことはあって、見晴らしが最高!





運河を挟んで反対側に、ザーンセスカンスの風車群が回っているのが確認できます。



風車の床板は雨水が堪らないように隙間が空いているので、ちょっと怖いかも〜。少し足がすくみます。



風車の上の部分は藁葺になっています。なかなか雰囲気があって素敵。


ちなみに、ここから見上げる羽はなかなか迫力があります。羽が回る鈍い音が物凄いんですよ〜。







そうそう。ミースさんの図案は羽の部分に飾りがついていますよね。

この飾りは、風車に関係する方たちの特別な時(結婚式、お葬式、結婚◯周年記念など)につけます。

風車守の方にちょっと伺ってみたら、「平均して20年に1回くらいの割合で飾り付けていますよ」とのこと。


なかなか実際に目にすることができない風車飾りですが、実は私たち家族はもう15年以上前にどこかの風車でこういう飾りを目にしたことがあるんです。が! その時の写真が行方不明…。(いつか出てきたら、お披露目いたしますね)



でも、幸いなことに、こちらの風車には、この飾りの写真が展示されてありました。
展示ガラスが粉をかぶっていたので、手で払って写真撮影。


この写真はミース図案と同じように、ドア枠や窓枠が「白」ですね。



そして、1階部分のカウンター近くにはこの写真が置いてありました。

風車の羽の一番上真ん中には、「vrede(フレイデ)」と書かれた飾りがあります。意味は「平和」。



そして、この風車の近くの道路にはこんな看板もかかっていました。1955年に大規模な修繕工事が行われたので、この飾りはその時のお祝いに掲げたものなのでしょう。(2001年にも補修工事が行われています)



こちらは風車の裏側。素敵なお庭が広がっています。



帰りがけに、こちらの風車で挽いた全粒粉を購入してきました。2.5㎏入りで5€。風車が建てられた17世紀もミースさんの時代も、そして今も変わらぬままのDe Bleeke Dood製小麦粉です。



では、ミースさんが図案化した この風車が実際に回っている姿を動画でご覧ください。




【風車情報】
Meelmolen De Bleeke Dood
住所:Lagedijk 28, 1544BG Zaandijk
https://zaanschemolen.nl/molen/de-bleeke-dood/


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